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ヒヨドリの標本を入手したので写真をアップしておきます。

拾得日  : 2014/08/30 朝(8:00頃)
拾得場所 : 東京都八王子市都立小宮公園 管理事務所付近
状態   : 極めて良好
死因   : ガラスに激突
性別   : 不明

ガラス激突による事故死のヒヨドリです。
翼の羽が生え揃っていない事や、口角が黄色なので今年生まれの幼鳥だと思います。
死亡時の体重は約71g〜75g程度で、ヒヨドリの体重の平均が66g〜101gなので、一応平均内に納まって
いますが、痩せ気味の個体だったようです。肛門などに汚れは無かったので、病気で弱っていた可能性
は低いと思います。

翼を確認してみると、初列や次列の羽が一部生えかけでした。大雨については、全部生えかけで、
飛翔能力は完全な状態ではなかったようです。これが事故の一因かもしれません。

大変短い命だったと思いますが、弔いの意も込めて載せておきます。(合掌…)


 全身

 流石にデカイです。
 長めの尾羽が特徴で、翼は初列もしっかり見える「扇翼」です。
 ヒヨドリは普段の行い(ウルサイ、結構乱暴)や、見た目が地味なので、嫌われ気味の鳥ですが、
 バランスの取れた鳥らしい鳥だと思います。
 

 頭まわり

 長めで、尖ったクチバシが特徴です。
 イメージしていたより、しっかりとしたクチバシです。また長さもかなりあります。
 鼻孔が発達していて、口を開けた状態では光が透けます。トレードマークの頬の模様ですが、
 これは基本的に茶色のようです。もう少し赤いイメージがあったのですが、違うようです。
 頭頂部の羽には白い模様が入っているようです。
 
 この個体が幼鳥だったせいか、頭の羽が少し少ない様な気がします。まだキチンと生え揃っ
 ていなかったのかもしれません。それと、羽枝の密度が全体に薄い(特に後頭部)ように思い
 ます。ヒヨドリの頭はボサボサに見えますが、白い模様と、荒い羽枝が原因と思われます。
 
 クチバシの付け根(口角の上)には、立派な剛毛羽(ヒゲ)が生えています。このヒゲはヒヨドリ
 の食性に関係していると思います。
 
 各部の寸法が分かり難いので、頭だけ簡単に作図(スケッチ)しました。
 





 尾まわり
 
 尾羽は6枚です。この個体の尾羽は一応生え揃っているようですが、まだ生えかけ中の羽も
 あるかもしれません。(どうも形が整っていないように思います)
 
 下尾筒は流石に小さ過ぎる様に思います。羽図鑑の下尾筒の羽は立派な模様があったので、
 ここは明らかに生えている最中と思われます。上尾筒は、足りないような気はしませんが、
 ここも完全には生えていない可能性が高いです。
 

 胸まわり
 
 基本的に2色だけですが、複雑な模様になっています。
 羽1枚1枚に模様が入り乱れています。
 

 背中まわり
 
 基本的に灰色一色です。
 

 足まわり
 
 普通に三前趾足です。フショにはウロコ模様が無いです。
 実測した各部の長さを書いておきます。
 
 フショ:23mm
 後趾 :18mm(11mm+7mm) 
 内趾 :16mm(11mm+5mm)
 中趾 :23mm(16mm+7mm)
 外趾 :16mm(12mm+4mm)
 
 指の長さ=全長(肉部分+爪部分)
 

 翼まわり
 
 羽図鑑では以下のようになっています。
 
 初列:11枚(P11はほとんど見えない)
 次列: 6枚
 
 で、実際に確認したところ、次列、三列は図鑑通りの枚数でしたが、初列については、
 9枚までは確認できたのですが、良く分からなかったです。
 
 大雨は、ことごとく生えかけです。これが飛行能力にどの程度影響するのか分かりませんが、
 少しは影響したと思います。羽を生やすには、普段より多くのエネルギーが必要で、これだけ
 まとめて生やそうとすると、結構大変なのではないかと思います。
 
 翼の特徴としては、初列の羽が長く、次列の羽が短めです。速く飛んで揚力を稼ごうと言う、
 戦略なのかもしれません。確かに、ヒヨドリは、あの独特の飛び方で、速く飛んでいるように
 思います。また、小翼羽が結構発達しているように思います。急停止など器用な飛び方ができ
 そうです。
 
 最後の2枚は肩羽が分かるように撮りました。翼を畳んだ状態では肩羽に中雨がかなり隠れそ
 うです。
 
 習作を製作するのに骨の長さが分かると良いので、実測した翼の骨の長さを書いておきます。
 なお、羽と筋肉の上からの測定なので、誤差があると思います。
 
 上腕骨   :約35mm(肩羽の骨)
 尺羽&トウ骨:約38mm(次列風切羽、三列風切羽の骨)
 手根中手骨 :約20mm(初列風切羽の骨(小翼羽除く))
 


 
 以上、ヒヨドリの標本でした。幼鳥なので、あまり参考にならないかもしれませんが、
 ヒヨドリは、やはり姿が良い鳥だと思います。いつかは作ってみたいです。
 地味な鳥ですが、胸の模様は複雑で、ボサボサな羽枝や、クチバシの付け根のヒゲなど、
 技術的には結構難しく、やり甲斐がありそうです。
 
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